予選。 またの名を、ある人物の、ある人物による、その人物の為の余興。
参加者たちが落とされたのは、鬱蒼としたジャングル、樹海のようなところだった。
たった一人、樹海の中に落とされた伯爵は、何気に見覚えのある雰囲気に首を傾げた。
しばらくすると、空から占い師の声が響く。
《あ~テステス。
参加者の皆さん、もう分かっていらっしゃるとは思いますが、そこは私たちの住んでいる地とはまったく異なった異空間です。
つまり、逃げ出そうとしても逃げません。
会場に戻るには、只ひたすらにゴールである扉を目指してください。
トラップも異生物もたくさん放ってありますし、もとからの生物たちもいますので、気をつけてください。
しかし、大丈夫です。死ぬ事はありません。死んでしまったらルールに背きますからね。ゴールできなくても、24時間したら迎えをよこします。ちなみにゴールは一時間経ったら消すつもりなので注意してくださいね。
では、頑張ってください。 クフフ ブチッ 》
子爵の場合
――――――では、頑張ってください。 クフフ ブチッ 》
と、占い師の言葉が終わるや否や、子爵の手は扉のノブを触っていた。
実は子爵、落とされた地点がゴール地点だったのだ。
―――予選通過第一号 アストラル・S・ソルト 計測不能
「のう、コレは有りなのか・・・フェール。」
「う~ん・・・・不思議な方ですね~子爵は。有りは有りなんですけど・・・・・
でも、ソルト・・・・それに、あの顔・・・何処かで見たような・・・・・・」
占い師にさえ分からない ミステリアス・キング アストラル・S・ソルト子爵。
王の悩み予備軍の一人だった。
伯爵の場合
占い師の声も終わり、伯爵はウロウロと歩いていた。
すると、目の前の草むらから翼の生えた巨大な蛇が出現した。
伯爵は驚き逃げようとするが、蛇は甘えたような声を出し、伯爵に擦り寄ってきた・・・・
「ん?その泣き声・・・。もしかして、ケアトル君か?」
シャー と蛇―ケアトル君は返事を返した。
ケアトル君は、4年前まで屋敷で飼っていた伯爵のお友達―ペットだった。
が、スクスクと成長しまくったケアトル君にとって屋敷は狭すぎるようになり、伯爵は占い師に頼み、屋敷の一室の扉を広い森に繋げて貰い、泣く泣くケアトル君をその部屋に移したのだった。
そして毎日、ケアトル君に食事を運んだり、コミュニケーションをとりに一日も欠かさず、この森に通っていたのだ。
そんな2人の間には、絶対的な主従関係 もとい、友好関係がある。
「・・・そうか。此処はケアトル君の森だったのか・・・・。フェールの奴・・ワザと・・いや偶然か・・・・?」
ケアトル君は嬉しそうな声で鳴くと、考え事をしている伯爵に存分に甘えてくる。
「ケアトル君、頼みを聞いてもらえないか?」
シャー とケアトル君は即答した。
大好きな伯爵の為ならケアトル君。自分の皮でバックだって作れます。と言っているのだが、今は通訳となってくれる存在がいないため、伯爵には シャー としか聞こえていない。
「俺をゴールまで連れて行って欲しいだが・・・・。」
ケアトル君は シャー ともう一鳴きすると、伯爵を背に乗せ巨体を引き摺り、木々を押し倒しながらゴールまで進んでいく。
―――予選通過第二号 フォール・B・グエス 17分
「さすがは、お前が育てた というべきか・・・・。」
「正確に言えば、育てたのは私の骸骨たちですけどね。
まぁ、血でしょう。あの子の父親、先代も今現在別邸でケルベロスを愛犬として飼っていますから・・・・・」
メイド長
占い師の声が止むと、サクサクと音を立てながら歩き出した。
こうして音を立てることによって、敵を誘い出している。
しばらく行くと、突如として草木の間から巨大な獣が襲い掛かってきた。
それは、9本の尻尾をもった銀色の狐。
メイド長は、ニッと口元を引き上げた。
数分後
ボロボロとなった銀狐と、その巨体に腰掛け剣の手入れをするメイド長。
[申し訳ありません。何でもしますから、許してください。]
狐は泣きながらに、メイド長に懇願した。
その尾は、怯えた犬のように後ろ足の間に仕舞い込まれている。
「・・・・そう、では助けてあげる。」
メイド長は笑みを深め、懐から真紅の小さな水晶球を取り出した。
「この前、興味本位に占い師に貰ったものが使うときがくるなんて、ね・・・。
これに、貴方の血をつけなさい。」
狐は、メイド長の言うとおりに水晶球に先程の戦いでついた傷から血をつけた。
そして、メイド長も指を切り、そこから滴る血を落とす。
「これで、貴方と私は血の契約を結んだ事になる。逆らったら、どうなるか分かっているでしょう?」
狐は、コクコク と涙目で頷いた。
「では、さっそく悪いんだけど、私をゴールに連れて行きなさい。」
[イエス、マム。]
大人が乗っても余裕の巨体である狐は、森の中を駆け抜けゴールへと到着した。
その途中、何人かを吹き飛ばしてきたが、それにさえも気づかないスピードだった。
―――予選通過第3号 ベル・シュレッド 27分
「さすがだわ、ベル。 フフフフフ」
「あらら、アレをペットにするなんて。クフフ。死んだら、Aたちの仲間にしちゃいましょう っと。 クフフフ 」
隣から響く夫人の誇らしげな笑い声。
同室の占い師による不気味な笑い声。
国王以外の部屋仕えたちが、運ばれていった・・・・(哀れ)
その他、24名の者たちがゴールする事ができた。
Bたちも適当な時間にゴールしていった。
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