開会宣言。
花火が打ち上げられ、開会式が始まった。
会場を見渡せるVIPルームのテラスには、玉座に座る王ルードルフ13世の姿。
その隣には、何故か占い師の姿がある。
ルードルフ13世は立ち上がると、開会の言葉を述べていっている。
「そういえば、夫人は?」
「奥様ならば、王のいる部屋の隣です。
将来、近衛隊に入りたいという子供たちと見学しているはずです。」
伯爵が、話している王の立つテラスの、右隣のボックス席を見ると、確かに数人の少年たちに囲まれ口元を扇で隠している夫人の姿があった。
そういう占い師は何故あそこに? というメイド長の目線に伯爵が答えた。
「フェールがこの大会の実行委員の一人らしいからな。」
すると王が玉座に座り、夫人がボックス席の中で立ち上がった。
「次は、王家特別政策顧問 パウリー・F・ポウンド公爵夫人より、お言葉を頂きます。」
司会者の声に、夫人は手を振り、観客たちは歓声と拍手を送った。
「・・・・・この良き日に、4年に一度の皆の奮闘を楽しみに・・・・・」
夫人がニコヤカに言葉を紡いでいく。
「へ~夫人って、そんな役職だったんだな・・・・」
「まぁ、実質はこの国に留まらず、世界の政策顧問といった感じの事をしていますが・・・。」
夫人の挨拶が終わると、司会者が礼をいい、進行していく。
「え~次は、王直轄長老相談役にして、今大会実行委員会名誉会長で在らせられます王族近衛隊特別顧問フェール・ゼアウ様による、今大会の説明です。」
そして、王の隣に黒衣のドレスとベールを涼しげに(現在、真夏)着こなす占い師が立ち上がった。
「・・・・何故、占い師に王家の役職が・・・・?」
「あ~・・・大会実行委員会名誉会長と王族近衛隊特別顧問っていう肩書きは、昔からあるらしいからな。知らないものの方が多いんじゃないか?
名誉会長は第一回の252年まえから(今大会、第63回目)らしいし、特別顧問のほうは、いざという時に働いてもらうっていうことで初代の王(建国約500年前)に押し付けられたらしい。
で、長老相談役は、現王陛下に“この国で、というか世界でお前以上に長老という名に似合う者が何処にいる”って即位の時に言われたって聞いたな。」
現王の即位は64年前、12歳のとき。
健康体そのものであった父王が、幼い頃から占い師に気に入られ、ズバズバ暴言や禁句を言っても無事でいられた皇太子であった現王に、王位を押し付け、国外逃亡をしてしまったのだ。
そんな年で、占い師に暴言を吐いて難なく役職を押し付けた現王。
それぐらいの気力が無ければ、この国の王は務まらないのかもしれない。
伯爵はソッと涙を拭った。
「では、ルール説明です。
絶対に殺してしまう事はいけません。事故の場合は許しましょう。その場合は私が何とかしますから。けれど、故意の場合であるのなら、私の手でお仕置きをしますので、心に留め置いてください。
では、本選に入る前に予選をしたいと思います。
何、簡単なものです。
この場所に1時間以内に戻ってくる事。それが出来たのなら、本選出場です。
戻って来れなくても、ちゃんと迎えに行きますから安心してください。」
占い師はスラスラと説明していく。
誰一人、占い師の声を遮ろうというものはいない。
そんな中、占い師を良く知る伯爵・メイド長・子爵、そしてB・D・Eは嫌な予感に襲われていた。
「では、行ってらっしゃい。」
突然の占い師の言葉に、参加者たちは えっ? という声を上げた。
しかし、時はすでに遅い。
占い師が指を パチン と鳴らす。
すると、会場の空に暗雲が立ちこめ、空が何かの口のように割れた。
そして、参加者たちだけが空の割れ目へと勢いよく吸い込んでいく。
「鬼―――――!!!!」
全員が吸い込まれていく中、伯爵の涙声が響いたとか・・・・
全てを呑み込むと、空は元通り快晴となった。
「では、観客の皆さん。一時間後にまた会いましょう。」
クフフフフ 占い師の不気味な笑い声が会場に残された者たちの耳を打った。PR