武術大会での新キャラ その後。
バルさんの悩み
ポウンド公爵家メイド長ベル・シュレッドと契約を結んだ“魔の森”の長であった九尾の狐 メイド長命名―バルさん。
森では、生まれながらにして巨大な力を有し生態系の頂点を極めていたが、ある日突然翼の生えた蛇が森に住み始めるし、突然たくさんの人間たちが森に現れたりと、彼の人生は一変してしまった。
森の長として、彼は森に出現した人間たちを駆逐しようとした。
そして、一人の人間を見つけ彼は襲い掛かった。
まず、それが間違えだったのだ。
彼が襲い掛かったのは、メイド服に剣を一本だけ手にした女だった。
彼は、簡単だと、頭から噛み砕いてしまえばいいだけだと思った。
しかし・・・・・
女の武器は剣だけではなかった。
彼の攻撃で剣が折れると、女は何処からともなく銃器を取り出し、手榴弾を取り出し、彼はあっという間に地に倒されていた。
女は、懐から真紅の水晶球を取り出し、彼の前に差し出した。
彼は、それが何なのかを本能で知っていた。
魔のものを拘束し、使役する力をもつものだと。
女は言った。
「これで、私との契約は成立した。逆らったら、どうなるか分かっているでしょう。」
彼は、生まれて初めて恐怖を感じた。
そうして、彼は、女―ベル・シュレッドの使い魔となった。
武術大会 後日
「バルさん!ちょっと来なさい!」
彼―バルさんは、公爵家の屋敷内では自由に過ごすことが許されていた。
時折、無謀な侵入者などを食べるという仕事をしているが、バルさんの一日は広い庭での日向ぼっこだった。
ある日、テラスで寛いでいる夫人の傍らに控えていたメイド長に呼ばれた。
バルさんが呼ばれるままに歩み寄っていくと、夫人がジーッとバルさんを見ている。
いや、バルさんの九本の尻尾を見ている。
バルさんの胸中をイヤーな予感が走る。
「ねぇ、ベル。尻尾一つくらい無くても支障はないわよね~」
フフフ と夫人の手がバルさんの一本の尻尾をさする。
「そうですね。奥様のおっしゃるとおりです。」
ニッコリと頷くメイド長の手には、一本の鉈が・・・・・。
そして、バルさんにジリジリとにじり寄ってくる。
その日、夫人宅の周辺に狐の鳴き声が響き渡ったという。
後日
「尻尾の一本や二本、無くても変わりないと思うけど・・・・」
「変わりますよ、夫人。狐は、尻尾に妖力を蓄えるんです。切っちゃたら弱くなります。」
バルさんは、タイミングよく遊びに来た占い師によって、事なきを得た。
ただしく言うのなら、Aの涙目によって・・・・・
けれど、彼は感じている。
自分の尻尾に向けられた狩人の目を・・・・・・・
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