ある日の 伯爵家での出来事。。。
ドヒャヒャヒャヒャケヒョヒョヒョヒョ
夫人が玄関の呼び鈴を鳴らすと、有り得ない音が鳴り響いた。
しかし、そんな事を気にするような夫人ではない。
今日は、メイド長もスノーも所用で出掛けている為、夫人は一人で伯爵邸へと遊びに来ていた。まぁ、暇だったのである。
3回ほど奇怪な音を鳴らした後、ドタドタという走る音と共に、人型をとったA君が飛び出してきた。
「ど・・どうしたのかしら、A君」
いつもならば冷静な物腰のAが、ここまで動揺している様子に、夫人は目を丸くした。
「ふ・・夫人様・・・・」
涙目に見上げてくるAに、夫人は顔の筋肉に力を加え、引き締めた。
「ど・・・どうぞお上がり下さい・・・・」
夫人は首を傾げながらも、Aの後に続き広間へと入っていった。
Aに導かれた広間で、夫人は口元を扇で隠し、顔の神経に意識を集中させた。
そこにあった光景とは・・・・
「あっ、ひとづまだぁ~」
「・・・・・・・・・・」
「何やの、このお姉はん」
「―――― 殺す ――――」
と、広間の中央の床に座り、夫人を見上げてくる4人の少年たち。
一人、鋏を両手に持ち殺気立っている子供もいるが、それは珍しく帰ってきている人型のEによって押さえつけられている。
「もう、あの方は易々と殺せるような相手じゃないわよぉ~。止めときなさいな、D。」
「D!!?」
Eが押さえつけている子供にいった言葉に、夫人は目を丸め驚いた。
「そっそ・・その子がD・・君・・なの・・・?」
じゃぁ・・他の子達はまさか・・・ 夫人は息を呑んだ。
「そうなんです。マスターが悪戯で皆に薬を飲ませてしまって・・・。
マスターには今、中和剤を作ってもらっています。」
「そうなの・・・・それもまた残念な・・・」
夫人の小さな本音の呟きは、Aには届かなかった。
「え?」
「いえ、なんでもないのよ?」
「・・・・・・・・全員、記憶まで退行してしまっていて、大変なんです。
だから、すみません。お構いも出来なくて・・・・・」
「いいのよ。それよりも、私にできる事があったら何でもいって頂戴ね」
占い師の部屋
占い師は、怪しげな色の液体の入った試験管を次々に混ぜ、かき混ぜていく。
何本かの試験管が、自然と宙に浮き、自分たちから液体を混ぜていくのは、このさい無視だ。
「また、面白い事をしたようね、占い師。」
「おや、お気に召しませんでしたか、夫人様。」
夫人に返事をしながらも、占い師は作業を進めていく。
その色は、青だったり、ライトグリーンだったり、紫だったり・・・・
「薬なんて作らなくていいわ。あの子たち(A君を含む)をウチにちょうだい。」
夫人の本気の言葉に、さすがの占い師も振り返り呆気に取られている。
「夫人様・・・・駄目ですよ。そんなことしたら、Aに怒られますし、ウチはメイドを雇う事が出来ないんですから(というか、誰も続かない)。あきらめてください。」
メイドが失踪する事約10人。邸内で行方不明になる事37人。庭の木々の栄養になる者9人。
現在の只一人―の生きたメイドであるロザリーが希少な存在なのだ。
ドロドロとした紫色の薬が出来上がり、夫人は渋りまくったが皆に飲ませる事になった。
「イヤー、これ絶対に苦いよ~」
B・C・Dは、占い師とA・Eの連結であっさりと飲ませたが(何故かと言うと、占い師が目の前に立つと三人とも身動きが取れなくなったため)、伯爵は見た目的に怪しい液体を怪しみ、口を硬く閉ざし、横を向いてしまう。
「苦くなんか在りません。さっさと呑みなさい。」
「いや!フェルの苦くないは、めちゃめちゃに苦いの!!」
「呑みなさい。」
首を左右に振り嫌がる伯爵であったが、占い師がニッコリと微笑めば、夫人の横に立つAのもとへと走りより涙目で抱きついた。
「A~。フェルがイジメルよ~」
「これも貴方のためなんです。すみません。」
Aはグイッと伯爵の頭を押さえつけると、鼻を摘み、息をする為に開かれた口に試験管の口をねじり込み、液体を流し込んだ。
このツーショットに、夫人はグラッときたが、Aの手前、自制を利かせた。
後日、
「なぁ夫人。あの日って何があったんです?俺記憶なくて~」
誰も教えてくれないんですよね~ という伯爵の前で悶える夫人がいたという。
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