前の話。
Eが言おうとした方法は過剰防衛になる可能性があるそうです。
屋敷内のどこか
小さな蝋燭の光が数本あるだけの薄暗い、あちらこちらに不気味の一言につきるものが乱雑におかれている部屋に、Aは出た。
「マスター、話聞いておられましたよね~。ユリアさんのためにお守りください。」
「分かっていますよ。」
Aへと返事をしながら、暗がり部屋の奥から数冊の分厚い本を抱えたフェールがあらわれ、埃で白くなった黒色のローブを頭からはずし、顔を出した。
「どうなさったんです、マスター?」
きょとんと目を丸め、Aは自然な動作でフェールから本を受け取った。
それらには『正しい守護の仕方』や『護符作成の全て 上級編』などと記されていた。
「近頃、護符をつくるなんて機会、一切ありませんでしたし、そっち方面に力を使うこともなかったですからね~。反対のことならば色々とあったのですけど・・・・クフフ。作り方がぼんやりとしてしまって。ユリアに持たせるのなら、下手なものはもたせられないでしょう。貴重なメイドの娘なのですから。」
「まぁ、ロザリーさんが出て行ったら、あと100年くらいはメイドなんて雇えそうにありませんから。」
「えぇ、本当に貴重なひとです。で、A。護符の効果は、どういったものがいいでしょうかねぇ~クフフ。うちの子であるユリアに手を出すなどという愚者、手心を加えてやる必要もないですからねぇ~クフフ」
「マスターにお任せします。あっ、でもユリアさんの目の前で効果が現れるなんていうのはやめてくださいね。」
「それくらい、分かっていますよ。まったく、私にとて一般常識くらいありますよ。・・・・では、邪ま心で近づいた場合、ユリアの視界に入る前に異界に消えてもらいましょう。そろそろ、餌を与えなくてはいけない仔がいましたからね。クフフフ。なんと、タイミングの良いことでしょうね。」
「最近は、餌になってくれる方少なかったですからね~」
「そういうところでは、フォールの 超不幸おいでませ体質 も役に立っていましたからね。あの子が引き連れていくる方々を堕としてしまえばいいだけでしたから・・・。まぁ、いいでしょう。A、護符は一刻後にはユリアに渡せるでしょう。クフフ。腕が鳴りますね~」
「では、一刻後にお茶をお持ちします。よろしくお願いします。」
コプコプ やら ギシャ やら ・・・奇怪な音が一層に奏で始めた部屋から、Aは再び壁を抜けることで退出していった。
この春、他の地区に比べ西区でのヘンタイの出没度が減ったことは、言うまでもない。
教訓「相手はちゃんと見極めましょう。」
PR