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200701110013
CATEGORY[その他 小説等]

学校のゼミでの課題で書いたものです。

「山猫亭」の言葉から作るというものだったのですが、何の打ち合わせもしていないのに友達と似たような感じになってしまってビックリしました。

 


意外にも、この設定を気に入っているようで、続き もしくは別の話でつかいたいとか考えてます。            それは、一体いつになるのかは、自分でもなぞです。

 

まだ薄暗い冬の早朝、僅かな電灯の光も消えかけている細い道を通り抜けると、鬱蒼と木々が茂る山があらわれる。

舗装されていない、木々の根っこが所々現れている坂道を僕は登っていく。

汗が額を流れる。

息が切れる。

生まれてからこのかた、ずっと街中で舗装された綺麗な道をのらりくらりと歩いて生きてきた僕にはとてもきつい道のりだっただろう。

でも、今僕は何も感じない。

なんだろう、この感じは。

まるで、いつも町でガラス越しに見ていた眩しい光にあふれた店の中。

それを見ているような感じだ。

疲れている。と理解できる。

でも、僕は疲れていない。

なんだろう。とても不思議だ。

 

しばらく歩く。

すると、前方の坂の上に淡い灯りが見えた。

僕は疲れた足を引きずりながら懸命に坂を登る。

体が重い。

二本の足に慣れてない僕は、余計によろけてしまう。

?慣れていない?どうして・・・・・・・

 

坂の上に辿り着いた。

すると、目の前には一軒の家。

灯りは、その家から漏れていた。

 

僕は家の玄関を、ガラッと開ける。

懐かしいガラス張りの引き戸。

昔はどこもこんな玄関だった。

家の中に入るのが、とても楽だった。

今じゃ何処の家も開き戸だ。

僕らは開けてもらわなくては、家に入ることさえできなくなった。

?あれ、なんでだ?

 

頭が混乱する。

なんで、僕はこんなところに居るんだろう。

僕は街に居たはずなのに。

人にあふれ、車にあふれた街に。

そこで生きていた筈なのに・・・・・・

なんで、僕は二足歩行に慣れてないなんて思ったんだ?

なんで、僕は

扉を開けてもらわなくては家に入れなかったんだ?

 

おかしい。おかしい。

僕は・・・・・・・・

 

「いらっしゃい。どなたですか~?」

玄関の奥、家の奥から高いソプラノの声が聞こえた。

パタパタと木の床を鳴らしてあらわれたのは、オッドアイの少女だった。

「・・・・・ここは・・・・」

「ん?あぁ、君もなんだ。まったく最近は本当に多いなぁ~」

僕が、此処が何処なのか聞こうとすると、少女は眉を顰めため息をついた。

「君、名前は?普通は、それぐらい覚えているものなんだけど・・・・」

「 ・・・な・・・まえ・・・・・」

頭が真っ白に染まりきっている。

僕は・・・・名前・・・何?何処から・・・来た・・・・?僕は・・・・・

「まっさか、それまで忘れちゃっているの?うへぇ~めんどくさいなぁ~」

少女は、僕の様子に嫌そうに顔を顰めている。

「まぁいい。しばらく此処にいれば、皆思い出すんだしね。君、此処に泊まっていきなよ。っていうか、そうしないとあっちの公僕君たちが迷惑するだろうし。」

少女は、僕の首もとの服をもつと家の中へと引っ張っていく。

「あっあの、ここは・・・・」

「此処は、山の中にある猫の屋敷、通称『山猫亭』よ!そして、私はシロって名前よ。」

少女-シロは、誇らしげに背を反らしたが

「山の中にある猫の屋敷だから『山猫亭』?捻りも何もないね。」

僕のボソッと呟いた言葉。本当に小さなその呟きがシロの耳に届いていたらしく、シロはムッと口を尖らせた。

「言っておくけど、私の命名じゃないわよ。ここの本当の所有者の爺の命名よ。私は只の管理人。此処を任せられているだけだもの。」

彼女の言い分に、僕はただ はぁ と軽い相槌をするしかない。

「で、今日はもう遅いから寝なさいね。」

えっ? と僕はシロの言葉に首を傾げた。

「えっ、遅いって、まだ朝だよ?」

「へぇあ?そこまで忘れているの?・・・いや、最近の奴は皆そんなもんか・・・・」

また、ため息をつく。

「まぁ、いい。しょうがないから今日のところは君に合わせるか・・・・」

すると、シロは僕にタオルを投げつけてきた。

「汚れはそれで拭いてね。」

「えっ、お風呂ってないの?」

「・・・・・私たちは水が嫌いなはずなんだけど・・・・ここまで堕ちたか・・・」

僕の質問に、シロは答えない。

とても小さなシロの呟きが聞こえた。

なんで、シロは僕とシロを一括りにしているんだろう・・・・・

それに、水が嫌い・・・・・

     ・・・そうだった。

僕は確かに水が、そしてお風呂が嫌いだった。

入れられそうになって、僕はよく暴れていた。大暴れして濡れて泡だらけの体で家中を走り回っていた・・・

・・・入れられそうになって・・・・・・?

「じゃあ、ご飯にしますか」

どれだけ、考えていたんだろう。

気がつくと、シロがお盆を二つもって僕のすぐ近くにいた。

「はい。これ君の分。」

シロが、僕の目の前に置いた盆の上には、ミルクと生魚と・・・鼠。

僕は、ギョッと目を見開いて横に立っているシロを睨み上げた。

「これ、どういうことだよ!!どういうつもりだ!!?」

声を荒げる。

ミルクはコップじゃなくて受け皿に注がれている。

生魚は刺身とかそういうものじゃなくて、一匹丸ごとの生の魚。

鼠は、そのまんま皿の上に寝転んでいる。

最近、小学校や中学校で起こっている苛めよりヒドイ!

シロは、そんな僕をただ無表情で見下ろし、また深いため息をついた。

「あぁ~もう我慢できない!!やっぱり、タロウのいう通りだった。私に我慢強さを求めようなんて無理の無理。そういう種族だもんね。」

  ドッ

痛い。シロの鋭く尖った爪が僕の首に食い込む。

僕は、シロに首を捕まれて床に押し付けられている。

首と背中の痛みを堪え、僕は、僕を見下ろしているシロを見るために目を開けた。

 

あら?どうして、シロがこんなに大きく見える?

さっきまで、シロの方が少し小さかったのに。

なんで今、シロがとても大きく見えるの?

これじゃあ、まるで・・・人間と・・・・・みたいな・・・・

 

「此処は『山猫亭』。山の頂上にいる死んだ者たちを裁く神のもとへ向かう猫の休憩場だよ。で、君が此処にきたってことは?もう思い出してんだろ?」

 

淡々と語るシロの手の中にいるのは、真っ黒い猫。

ニャー と弱弱しく鳴いている。

「まったく、君は年をとって飼い主に捨てられて衰弱死した猫、名前はクロ。ネーミングセンスないねぇ~君の元飼い主は。」

シロの言葉に、黒猫はまたニャーと弱弱しく鳴く。

「まぁ、思い出したし、もう行けるでしょ?山の頂上に、さ。」

シロは黒猫を床に降ろしてやる。

「猫の癖に後ろ足だけで歩くから疲れるんだよ。前足もつかえば早いって。」

ゴロゴロと喉を鳴らし、黒猫はシロの足に擦り寄った。

そして、トトトッと軽い足音をたてて家から出て行った。

 

黒猫は、山を登る。

山の頂上に住んでいる神様に、新しい体をもらって、また地上に戻るために。

次は何になるんだろう。鳥になるのかな。それとも、人間になるのかな。と考えながら。

 

 

「まったく、最近の子は自分が猫だった忘れちゃうから困るよ。

それも、これも、人間の奴らが人間と同じような暮らしをさせるからだ。

水が嫌いなのに、お風呂に入れる。人間みたいに服を着せる。夜が行動の時間なのに、自分たちと同じ時間で行動させる。」

シロは、黒猫のためにだしたのに皿の上に放って置かれている鼠をつかむと、丸齧りにしていく。

シロの口元が、鼠の血で真っ赤に染まった。

「まったく、しょうがない生き物だね、人間って奴は。

     ・・・暇だなぁ~『山犬亭』にでも遊びに行こうかなぁ~それとも『山猿亭』・・・・

本当、神様、ネーミングセンスないなぁ~呆けちゃったんじゃないのかなぁ・・・・

うん、よし。神様の所に遊びに行ってあげよう。やっぱり刺激がないと呆けるの早いっていうし。仕事サボるなって言われたら、気紛れが猫の特徴っていっておけばいいや。」

うんうん と相槌を打ちながら、シロが『山猫亭』を後にした。

 

 

『山狼亭』は潰れたし、『山熊亭』もちょっと傾いてきているっていうし・・・

さぁて、次に潰れちゃうのは何処だろう?

 

もしかしたら、『山人亭』ってのがあって、それが潰れちゃうかも。

そしたら、あたしたちは幸せなのに・・・・・

そうだ、いいこと考えた!

その方が、皆が幸せになれるじゃない!!

今度、暇になっちゃってゴロゴロしているロウ君たちを誘って神様の所に行ってみよう。

そうよ、そう。

そうしよう・・・・・・

それが一番いいことだよ。

山の奥深く、光の届かぬ木々の間に、くすくす と女の笑い声が何時までも響く。

                                  終わり

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